沖縄からみえる世界   地球・生命・宗教・先住民

人間が誕生し20万年が経つ。12万5千年前より火の利用を始め、10万年前にアフリカを出たと言われている。そして、5千年前にエジプト、黄河をはじめとする初期の文明が起きた。それから約2800年前になるとローマ時代が始まる。 つい250年前に産業革命が起きると、地球・環境・生命・宗教・先住民へ大きな影響を与え始める。西暦2017年の現在より、過去、未来を考える。

不思議台湾

プユマ族 写真提供 Franky

 

・面積は九州ほど。

・北部は中国語話者が多い。台北を中心に人口が多い。

・南部は台湾語話者が多い。人口は少ない。

・南北と中央に山脈が走り(最高峰は玉山(ユーシャン)約 4000M.西側は漢人が多く、大きな街が多い。

・東側は原住民の住む地域が多く自然が豊か。

・台湾には日本統治時代の日本軍人や軍艦を祀る廟が存在する。

堂内には戦時中アメリカ軍に撃沈された日本軍の軍艦が祀られている。

・2024 総裁選 2 日後、ナウルが台湾との国交断絶を発表し中国との国交回復を表明。国交を結んでいる国は残り12 カ国。

・台湾と日本はお互いに好きな国1位同士と相思相愛。将来の夢は「日本人になりたい!」と言うシャイな五~六歳の男の子に会った。

・2020 年、20 代の投票率は 76%!? 日本は 34%。

・世界第2位のベジタリアン国家。

・原住民達の意志はどうなっているの?

・両岸関係の力関係に於いては圧倒的に中国が強い。経済と軍事、外交。

・台湾の武器は質の高い民主制社会。民主主義の模範となる台湾を専制国家の中国に蹂躙させてはいけないと世界に思わせ中国を牽制する。それと半導体

 

 

【台東での一ヶ月】

 

2023 年の暮れ 12 月 14 日から 1 月 17 日迄、台湾の台東県台東市卑南郷利嘉村に約一月滞在した。今回の台湾滞在の目的は自信の中国語学習の為であった為それ以外の事には余り注意を払わなかったが、1 月 13 日は 4 年に一度の台湾総統選挙と立法委員(日本の国会議員)の選挙があり、台湾人にとっては様々なドラマが有った一ヶ月であった。

しかし如何せん私の中国語能力では日々の会話やニュースなどは殆ど理解できなかったのと、利嘉村という台湾原住民のプユマ族の小さな村であったので選挙の熱からは一定程度距離があった。

 

“有人在家”という民宿に一月お世話になった。

大体いつも宿泊者がいた。彼らはオーナーの官官(ぐゎんぐゎん)と山猪(シャンジュ)の友人達で多くは台北や台中や高雄などの大きな街からやって来て台東の自然を満喫したり、宿でのんびりと過ごす事を目的としていた。

興味深いなと思ったのが、台湾にもお茶の文化があり、ウーロン茶を中心に多くの種類のお

茶がある。

時間をゆったりと使い、香りや静寂を楽しみたいと、若い層にも一定の人気があるようだった。

台湾滞在中に何度かお茶の時間をみんなで楽しんだが、一度、仏教を勉強、修行しているという 20~30 代の方達に出会った。彼らは現在の修行方法に悩んでいるらしく、日本人の僧侶である私に感心を持ち、一緒に話をした。

 

彼らの内の1人が、世界で起きている戦争や、社会の中の様々な問題に心を痛めているが、師事している僧侶にどう思うかと聞くと、“その様な問題に囚われるべきではない。物事を善悪で判断してはいけない。己という迷いを捨てて心をおさめなさい。”(うろ覚え。何となくこんな内容だったと思う。)と彼らに話すらしい。

彼らは仏教がとても素晴らしい教えであると思うが、世界の現実的な問題に関与しようとしない仏教徒達に疑問を持っているようだった。

 

彼らから「あなたはどの様な修行をしているのですか?」と聞かれた。私は自分が仏教やガンディーの思想に出会った経緯などを話し、現在沖縄で座り込みをしたり、平和行進をしたりしている事などを彼らに話した。

 

台湾仏教は出家主義で、遁世的な性格を持っている事から世俗社会から一定の距離を置き、閑かな環境で修行生活を送る。(大多数の仏教徒はこの様なスタンスに近いと思う。)

 

後から彼らは以下のメッセージを送ってきてくれた。

「今日、時間を割いて私たちと話をしてくれたことに深い感謝とお礼を申し上げたい。あなたのおかげで、私がずっと抱えてきたとても大きな葛藤を解決することができた。どちらかである必要はないし、両方であることもある。ありがとうございました。」

 

最初、話しがしたいと言われた時は、“教学的な問答は嫌だな~”と思って緊張したが、話してみるとお互いに有益な時間となった。

 

台東は都会の生活に嫌気がさした人達が移住したり、小旅行に来たりする場所という一面を持っている。

それと、台東には原住民(先住民とは呼ばない。理由は先住民という言葉の意味が既に居なくなった人々を指すからだという。)の村が多く、漢民族系の台湾人達は彼らの自然と共生した生き方に敬意を持っているようだ。又、台湾人として彼らに対する贖罪の念もあるのではないだろうかと想像したりもした。(過去に漢民族と原住民の闘いがあった)これは沖縄に住む東京出身の私と近い感覚なのかなぁと思った。

有人在家にて



 

【何故台湾が民進党を選び続けているのか?】

 

日本をはじめ、海外メディアでは『総統選で民進党が勝ったら戦争の可能性が高まる!?

という警戒する声が聞こえてくる。

それは欧米発信の情報(日本も含まれる)を得ているとそう見えてくる。

 

確かに台湾でも新聞やニュースを見ているとよく中国の軍事演習などが報道されているし、中国の衛星ロケット発射にスマホの緊急アラーム鳴ったり、皆それなりの緊張感は持っている。

 

しかし海外と台湾との認識にはギャップがある。

 

国民党が中国大陸から台湾に敗走してきた 1947 年以降しばらく中国との交戦状態は続き、中国のトップが変わったり、国際情勢などに左右されたりして中国の脅威が大小する時期はあっても一定の緊張状態は継続的に続いているという事の肌感覚だと思う。

みんなこの様な状況には慣れているのだ。今に始まったことではないし、まさか今、中国が台湾に侵攻してくることはないだろうと思っているのが大半の台湾世論だと思う。

 

しかし一つ重要な点は、現在に於いて武力侵攻を始めるのは台湾ではなく中国であるということだ。その様な点からも私達が台湾に中国を挑発するなというのは違うと台湾の人は思っているだろう。それは中国に言ってくれと。

 

『台湾はアメリカとの関係を深め、防衛力を強化し、中国との緊張関係を高めるのではなく、中国と話し合い、外交で問題を解決して欲しい。』

 

台湾国外の人達がこの様に考えるのは“台湾有事“が起きて欲しくないと思う故だろう。私も台湾に通うようになる前はその様に思っていた。

しかし、台湾の人達にその話をすると、嫌な顔をする人が多く、中国政府とはまともに話しなど出来ないと訴える。

 

現に中国政府は民進党政府との対話を拒否し続けている。

中国は台湾人が選挙で選んだ現政府ではなく、親中派とされる前政権の国民党となら話すというのが中国の姿勢である。

 

今回の台湾の選挙結果を受けて中国政府は次のように声明を発表している。

 

「今回の二つの選挙結果は、民進党が島内の主流の民意を代表できないことを示した。台湾は中国の台湾である。今回の選挙で両岸関係の基本的枠組みと発展の方向が変わることはなく、両岸の同胞が近づき、親しくなり、近づくほど親しくなるという共通の願いが変わることもない。祖国が必ず統一され、必然的に統一されるという大勢を阻むこともできない。

台湾問題を解決し、国家統一を成し遂げるわれわれの立場は一貫しており、意志は盤石である。われわれは「一つの中国」の原則を体現する「九二共識(92年コンセンサス)」を堅持し、「台湾独立」の分裂行為と外部勢力の干渉に断固反対する。台湾の関係政党と団体、各界の人士とともに、両岸の交流と協力を促進し、両岸の融合と発展を深化させ、中華文化を発揚し、両岸関係の平和的発展を推し進め、祖国統一の大業を推進していく。」

 

継続的に軍事的挑発を受け続け、対話は拒否され、経済制裁を受け、中国の外交圧力で僅かに残る外国との国交も少なくなっている。台湾は米中対立の渦中の駒とされ、どちらに偏りすぎても危険という状況にある。

 

『例え中国政府とは良い関係を築くのは無理でも、国民とは良い関係を築いた方がいいのでは?』

と私も考えたし、今もそう思う。

 

しかし、“言うは易し、行うは難し”だ。

 

2023 年 5 月 23 日、読売新聞記事より。

中国本土で過半数が「中台統一への全面戦争を支持」…シンガポール国立大学などが世論調査香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは22日、シンガポール国立大学などが中国本土で実施した世論調査で、過半数が中台統一のための全面戦争を支持すると答えたと報じた。

調査は2020年末から21年初めにかけて実施され、1824人が対象。統一のための戦争を55%が支持し、反対は約3割にとどまった。台湾に統一を同意させるための戦争以外の方法としては、57%が「経済制裁」だとした。22%は「台湾が別の政治制度を維持していても構わない」と回答した。

 

そもそも中国に住む人で、中国政府の政策に批判的になることは大きなリスクを伴う。コロナ対策や経済施策に対する批判よりも更に台湾、新疆ウイグルチベット問題等への批判は致命的でリスクも大きい。中国国内でこの事に言及することは不可能だ。例え海外にいたとしても、何処かで発言を聞かれ密告されれば、帰国後に様々な困難があるだろうし、家族にも影響が及ぶこともあるだろう。

 

私達人間は他人に対してよく「こうすればいいのに」とか、「何でこうしないんだろう」というふうに思いを巡らせてしまう。

でもこの様に考えてみると相手への理解が深まるし、不信感も無くなるのではないだろうか。

 

「何故その選択をするに至ったのか?」と。

 

相手の立場になって考えてみる。その為にはそこに至る迄の様々な経緯を知る必要があるし、台中関係の場合は近現代史も理解する必要があるし、台湾現地での雰囲気や感覚も必要になってくるのではないだろうか。

それと、当事者達(有権者)は様々な事を考慮し、また家族親戚の影響、多くの日本人が触れることのない中国語圏のメディアの影響等を受けてその判断をしていると考えるべきだ。

自分の国の物差しで相手の国の人達を判断するといつまで経っても理解できないだろう。

特に台湾の事を深く知らないのに、台湾人達の選択を早計に評価することは台湾人達を理解することに繋がらないし、結局はお互いの理解や認識に行き違いが生じてしまう恐れがある。

この事は現在もそして将来的にも両者にとって大きなマイナスとなりえることだと思う。

台東市街地 選挙活動 国民党



 

【台湾と向き合う】

 

最近、沖縄は中国との関係を深めようと努力している。

この事自体は沖縄県民も反対している人は少ないはずだ。日米中政府間の緊張関係が高止まりする中、多くの米軍基地や自衛隊基地を抱える沖縄県は東アジアの地域紛争を回避する為に信頼関係を作る努力をしている。

私も沖縄県民として、又日本人としてこの様な県政外交、市民外交は大切で継続していくべきだと思っている。

 

しかし、私達沖縄県民が注意すべき点は、公での中国側とのやりとりは中国政府の方針に沿ったやりとりしか出来ないということだ。

 

それは多くの台湾人の目から見てどう写るのか?

香港(チベットウイグルもかな?)の民主化運動に関わった人達がどう考えるか?

 

何故ならば、台湾は中国政府から武力統一も辞さないという恐怖を与えられているし、香港も中国政府によって民主的な社会は奪われ、10 万人以上が海外へ出て行った。今や香港でも政府に批判の声をあげることは出来なくなった。台湾の人達はこの香港に対する中国政府の一連の弾圧を目の当たりにし(香港から台湾に逃げてきた人もいる)“今日の香港、明日の台湾“という言葉が台湾で流布した。

 

沖縄が中国との良好な関係を築くことは大事だが、台湾の人達の中国に対する思いよく理解しておく必要があるし、台湾とも更に深い交流を持つべきである。

そうでないと台湾の人達から沖縄が中国との外交を重視する意味を理解してもらえないし、誤った認識を持たれてしまう。

アメリカと日本の帝国主義植民地主義の犠牲者である沖縄。

中国の帝国主義覇権主義の犠牲者である台湾。

 

この構図を頭に入れて、私達はもっと深く強く繋がることが必要である。

 

台湾の現政権(民進党)を支持する層は高齢世代よりも中年世代から若者が多い。政策も保守系ではなく革新系のものが多い。

 

一国の政治を保守・革新で分けてしまうから混乱が生じてしまうのだが、台湾の現政権である民進党は二大政党のもう一つの国民党と比較すると革新的、民主的な政党になる。

しかし安全保障政策では軍事費を増額、徴兵の期間を延長、米軍との関係強化する方向性だ。(しかし、安全保障政策では国民党も民衆党も大きく異なるものではない。それは何故かというと国民全体が中国の軍事的脅威を認識しているからだ。)

 

台湾で安倍晋三元首相の人気があるのは「台湾有事は日本有事」との発言に見られるように、日本は決して台湾を見捨てないという、メッセージを発したからだ。

高雄市の紅毛港保安堂前に建てられた安倍晋三銅像



 

日本の植民地である沖縄の現状の打開策の一つとして自己決定権や琉球独立論があると思う。それなのに台湾が自己決定権や台湾独立を主張すると中国と戦争になるからやめるべき”という考え方はおかしくないだろうか?

 

台湾は自国の領土を持ち、パスポートも有り、国民から選挙で選ばれた政府もいる。

台湾が国家として足りていないのは各国からの承認、即ち国交である。

選挙直後 ナウルが台湾との断行を発表



 

【誰が台湾を今の状況にさせたの? 】

 

日本やアメリカをはじめとする国々は戦後中華人民共和国ではなく中華民国(台湾)と国交を結んでいたのはご存じだろうか?

中華人民共和国(中国)ではなく中華民国(台湾)が国連の常任理事国であったのだ。しかし 1971 年 9 月 25 日に第 26 回国連総会でアルバニア決議「中華人民共和国政府の代表権回復、中華民国政府追放」によって現在の中国が国連の常任理事国となり、中華民国としての台湾は抗議する形で国連を脱退した。

 

私達は台湾の防衛力強化は戦争への道だと心配しているけれど、その原因はなんだ?

圧倒的な国力で迫る中国から台湾が自らを守ろうとする選択を、私達の立ち位置から(沖縄が戦争に巻き込まれたくない)のみで判断するべきではない。安全地帯からの非軍事論という指摘があったとして、私達にどうやって反論できるだろうか?

 

私達、日本の憲法九条非戦派は、実は世界最強の軍隊に守られているからこそ非戦論を唱えることが可能だったのだろうか?

そんな思いが“むくむくっ“と生まれてくる。

 

もし沖縄にいる私達が台湾に対して非戦論、非軍事論を伝えたいのだとしたら、台湾の現状を理解し、台湾人の視点に立っても納得できるような非戦論を展開するべきではないだろうか。



 

【今回の台湾選挙の概観】

 

民進党民主進歩党は二期8年政権に居て既得権益化、汚職がある。でも、中国との関係に於いてはアメリカや多くの民主制国家との連携を上手く作り、中国に対しての一定の抑止効果を生み出せたという評価がある。

 

国民党、かつて一党独裁。大企業との繋がり。既得権益 親中国寄りで不安。台湾の世論は年々、自分を中国人ではなく台湾人として認識する、所謂台湾アイデンティティが強くなってきている。例え親中派と呼ばれる国民党といえども、中国寄りの主張できなくなってきている。(元々国民党が中国共産党国共内戦を闘ったのだが。)

 

民衆党 「新しい政党が出ないと私達の(経済的に」苦しい生活は変わらない」、「民進党と国民党は互いを罵りあってばかり」、「一党による長期政権は良くない」と、二十代の5~6割が支持。ただ六十代以上は1割にも満たない。民進党が政党と認められた民主化以降国民党との二大政党政治で来た台湾だが、若い世代にはどちらも市民から離れたエリート政治に見えた。又、長い一党独裁の時代を経験した台湾社会には、民進党であろうとも、権力を長く持たせることには良しとしない感覚があるようだ。そして党首である柯文哲(KoWen-je)のカリスマによる人気。

 

今回民進党は総統選では再度勝利したが、立法院では過半数を有していた議席を失い、国民党が第一党となった。しかし国民党も過半数に届かず、第三党の民衆党が大きな力を手に入れた構図となった。

台湾では人気? 麻生太郎



 

【終わりに】

 

人間社会は脅威を感じると、例えそれが不確定だとしても過剰に反応してしまうものだ。その事はナチス・ドイツの最高幹部の一人ゲーリングの言葉に詳しい「自分達が外国から攻撃されていると説明するだけでいい。そして平和主義者については、彼らは愛国心がなく国家を危険に晒す人々だと公然と非難すればいいだけのことだ。この方法はどの国でも同じように通用するものだ。」と。

 

仏教の考え方では、結果に至るには“因”が有り“縁”によって“果”が生じるとする。

その考え方に基づけば、結局は現時点では分からないというか、因と縁次第ではどちらにもなり得るという事になる。

私達はそうならない為の努力を積み重ねなければいけない。

 

井の中の蛙、大海を知らず“ 私達人間は自分の見たい世界を見ている。

自分の理解の及ばない事や、見たくないモノに出逢うと、否定してしまったり、見なかった事にしてしまったりする。

私自身、そうならないように気をつけたい。

 

私の頭の中で台湾が何を望むかを想像する。

“他国と国交を結ぶこと。国連に復帰加盟すること?”

しかしこれは台湾が望んでも、中国が決して許さないものだ。

 

私は巨大な力を持つ組織や人間達の願いではなく、私が出会った人達、これから出会う人達の願いが実現する世界であって欲しいと思っている。

中華民国台湾へ入国



 

南無妙法蓮華経

合掌

クスクス社のあった高士神社から望む八瑶湾